法人契約の保険(損金、資産性、受取人の課税)について-FP2級

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法人が契約する生命保険は、個人が利用する保険とは異なり、契約者・被保険者・保険金受取人の組み合わせによって課税関係が変化します。また、保険の種類ごとに「資産性」が異なり、法人の会計処理に反映される点が特徴です。

FP2級では、この仕組みを正しく理解しているかどうかがよく問われます。本記事では、定期保険・終身保険・養老保険・医療保険・がん保険について、それぞれの性質と法人税務上の扱いを整理していきます。


法人契約の保険を理解するための基本視点

法人保険は次の3つの要素で整理するのが最も分かりやすいです。

契約者(保険料負担者)

→ 法人が支払う場合、損金になるか、資産計上するかが焦点。

被保険者(誰に保険をかけているか)

→ 社長・役員・従業員など。

保険金受取人

→ 法人、遺族、本人など。
→ 誰が受け取るかにより、法人税・所得税・相続税の課税が決まる。

FP試験では、この3点の関係を正しく理解することで得点しやすくなります。


保険の種類別:性質と資産性、損金との関係

ここからは、各保険についてその特徴と経理上の扱いを順に説明します。


定期保険=いわゆる「掛け捨て」で資産性なし

性質

  • 一定期間(10年、20年など)のみ死亡保障
  • 満期金なし、解約返戻金はほぼゼロ
  • 掛け捨ての典型

私も家族のためにライフネット生命の掛け捨ての生命保険に入っています。

資産性と損金

  • 資産性なし
  • 保険料は損金算入されることが多い(全額または一部)

保険金受取時の扱い

  • 受取人が法人の場合:全額益金
  • 遺族の場合:死亡退職金(相続税)

掛け捨てであるため、法人にとってはシンプルな税務処理が特徴です。


終身保険=一生涯保障で貯蓄性がある(資産性が高い)

性質

  • 死亡したときに必ず保険金が支払われる
  • 満期はない
  • 解約返戻金が長期で増加する「貯蓄性の高い保険」

資産性と損金

  • 資産性が高く、支払保険料は資産計上(保険積立金)
  • 損金算入は原則不可(一部例外商品あり)

保険金受取時の扱い

  • 受取人が法人:
     受取保険金(例:800万) - 資産計上していた保険料部分(700万) = 益金(100万)
  • 受取人が遺族:
     死亡退職金(相続税)

終身保険では、支払った保険料が「貯蓄」として扱われるため、支払った保険は損金にならず、資産計上します。→受取時にはそれを取り崩すため、「すべてが益金」にはなりません。


養老保険:死亡しても満期でも保険金が出る

性質

  • 死亡時:死亡保険金
  • 満期生存時:満期保険金
  • 必ず保険金を受け取れる
  • 解約返戻金も大きく、非常に資産性が高い

資産性と損金

  • 終身保険より資産性がさらに高い
  • 支払保険料は全額または大部分を資産計上
  • 損金算入は難しい

保険金受取時の扱い

  • 受取人が法人
     受取保険金 - 資産計上していた金額 = 益金
  • 受取人が被保険者本人(役員)
     給与として課税
  • 受取人が遺族
     死亡退職金(相続税)

満期保険金の受取人によって税目が変わる点がFP2級の頻出ポイントです。


医療保険:入院日額などの保障、掛け捨て型

性質

  • 入院・手術などを保障
  • 解約返戻金なし
  • 資産性なし(掛け捨て)

資産性と損金

  • 資産性なし
  • 保険料は損金算入されることが多い

給付金の扱い

  • 給付金を法人が受け取る:益金
  • 被保険者個人が受け取る:給与課税
    (福利厚生目的の従業員向け契約では非課税扱いもあり)

がん保険:第三分野で掛け捨て型

性質

  • がん診断時の一時金や治療給付
  • 資産性なし
  • 医療保険と同様、多くが掛け捨て

資産性と損金

  • 資産性なし
  • 保険料は損金算入されることが多い

給付金の扱い

  • 法人受取:益金
  • 個人受取:給与扱い

被保険者と受取人で変わる税務区分

保険金の受取人によって、課税の種類が変わります。

受取人=法人

→ 原則として 益金(法人税)

受取人=遺族

死亡退職金(相続税)

受取人=被保険者本人(役員など)

給与として所得税課税

FP2級では、「誰が受け取ったか」の区別が得点のポイントです。


保険料の損金算入を決めるもの:資産性

法人契約の保険では、支払保険料が損金になるか資産になるかは、その保険がどれほど「貯蓄性」を持つかによって判定されます。

資産性がない(掛け捨て) → 損金になりやすい

  • 定期保険
  • 医療保険
  • がん保険

資産性が高い(貯蓄性がある) → 資産計上

  • 終身保険
  • 養老保険

資産に計上した部分は、後に保険金を受け取った際に「取り崩す」形となるため、その部分には課税されません。


FP2級で覚える最低限のまとめ

  • 掛け捨て(資産性なし):定期保険・医療保険・がん保険
     → 保険料は損金になりやすく、受取保険金は原則益金
  • 貯蓄型(資産性あり):終身保険・養老保険
     → 保険料は資産計上
     → 保険金は「受取額-資産計上分」だけ益金
  • 受取人が遺族:死亡退職金(相続税)
  • 受取人が本人:給与扱い(所得税)

この整理さえできていれば、FP2級の法人保険問題は得点源となります。

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