相続で不動産を取得した際、多くの方が驚かれるのが「売却したときの税金の重さ」です。
一見すると、古い不動産を売却すれば大きな現金が手元に残るように思えますが、実際には想像以上に税金がかかるケースが多く見られます。
本記事では、相続不動産を売ると税金が重くなる仕組みを、換価分割と取得費の観点から分かりやすく解説します。
相続不動産の売却で税金が重くなる理由
相続不動産を売却する際には、相続税とは別に「譲渡所得税」が発生します。この点を十分に理解しておかないと、手取り額が大幅に減少してしまう可能性があります。
譲渡所得税は、不動産の売却益に対して約20%(所得税+住民税)が課される税金です。特に相続不動産の多くは取得時期が古いため、売却益が大きくなりやすいという特徴があります。
取得費が極端に小さくなるケース
相続した不動産の多くは、30年、40年、あるいは50年以上前に取得されたものです。1960年代や1970年代に購入された土地であれば、現在の地価と比較して取得費は非常に低く、その結果、売却時の利益(=課税対象)が大きくなります。
例えば、次のようなケースが典型です。
- 1965年に100万円で購入
- 現在の売却価格は4,000万円
- 取得費はそのまま100万円
この場合、利益は3,900万円となり、約20%の税率をかけると譲渡所得税だけで約780万円となります。さらに、相続の際には相続税もかかっているため、結果的に税負担は非常に大きなものとなります。
また、取得時の資料が残っておらず取得費が確認できない場合は「概算取得費」として売却価格の5%しか認められません。売却額4,000万円であれば、取得費はわずか200万円です。このケースでも、多額の譲渡所得税が発生します。
換価分割と代償分割の違い
相続した不動産を現金化して分ける方法を「換価分割」といいます。一方、特定の相続人が不動産を相続し、他の相続人に代償金を支払う方法が「代償分割」です。
両者の大きな違いは、所得税がかかるかどうかにあります。
- 換価分割:不動産売却により「譲渡所得税」が発生
- 代償分割:売却を伴わないため所得税は発生しない(相続税のみ)
したがって、換価分割を選択すると税負担が重くなる傾向があります。相続人間で公平に分けられるというメリットはあるものの、税金面では最もコストが高い方法ともいえます。
売却するより有効活用した方が良い場合
取得費が極めて小さい相続不動産を売却する場合、譲渡所得税が非常に重くなる傾向があります。そのため、必ずしも「売る」ことが最適とは限りません。状況によっては、以下のような選択肢の方が有利となります。
- 更地にして駐車場として活用
- 借家やアパートとして賃貸運用
- 土地を維持したまま将来の売却タイミングを待つ
- 代償分割で不動産を引き継ぎ、売却自体を行わない
不動産は活用方法によって資産価値が変わります。相続した不動産を単純に売却するのではなく、税負担や今後の収益性まで含めて総合的に判断することが重要です。
まとめ
相続不動産の売却で税金が重くなる最大の理由は、取得費が極端に小さくなりがちな点にあります。特に1960年代〜1970年代に取得された不動産は、売却益が大きくなるため、譲渡所得税が高額になる傾向があります。
相続後に不動産を売却するか、それとも活用するかを判断する際には、以下の点を意識すると良いでしょう。
- 取得費がどの程度残っているか
- 売却益と譲渡所得税の大きさ
- 分割方法による税負担の違い
- 不動産を貸す等の活用可能性
相続不動産は、活かし方次第で大きな資産にもなります。安易に売却する前に、税務と活用方法の両面から慎重に判断することが大切です。
十七庵では生活に役立つ情報を発信しています。
今後とも、引き続きよろしくお願いいたします。

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