近年、小規模で独立志向の強い美容系サロン、士業、クリエイター、個人事業主が増えています。しかし、彼らが事業を始めようとしたとき、必ず壁になるのが「ちょうどいい物件が見つからない」という問題です。家賃が高すぎたり、広すぎたり、逆に古くて雰囲気が悪かったり、安さだけが売りの雑居系テナントだったり…。結果として、せっかく技術力やサービス品質が高い事業者であっても「自分に合う店舗がないから開業できない」という状況に陥ります。
本記事では、私自身が検討している「小さなミニテナント型の商業施設(小規模商業施設)」をベースに、なぜ“上質テナント × 通常価格”という戦略が最も成功しやすいのか。その理由を構造的にまとめていきます。小規模商業施設の開発を考えている人や、独立したいけれど適した場所が見つからない人にも役立つ内容です。
1. 激安物件ではなく「上質な店舗 × 通常価格」を狙う理由
テナント募集というと、「まずは安くして人を集めよう」という考え方が一般的です。しかし、実際には激安路線は失敗する確率が高く、建物の価値も落ちていきます。
例えば6坪の区画を3万円で貸した場合、たしかに入居はすぐ決まるでしょう。しかし、集まる客層は“家賃を最優先で考える層”になります。この層は入居コストは低いものの、売上の安定性が低かったり、建物内のルールや清潔さに対する意識が薄かったりしがちです。
一方で、5万円の相場価格でも、「上質な空間ならぜひ借りたい」という事業者は実は非常に多いのです。特に次のような業種は“雰囲気・立地・静けさ・世界観”を重視します。
- ネイル・まつエク
- 整体・リラクゼーション
- エステ
- FP・行政書士・士業系
- 小規模セレクトショップ
- ハンドメイド作家
- デザイン・クリエイティブ事務所
こうした事業者の共通点は、「お客様の質が高く、来店頻度も落ち着いており、クレームも少ない」こと。結果として、建物全体の雰囲気が整い、モールとしての価値が上がりつづけます。
2. “上質テナントが入れる箱”が圧倒的に不足している
最も大事なポイントはここです。
上質テナントが足りないのではなく、
上質テナントが入れる“箱”が足りない。
多くの独立志向の人が、「6坪程度でキレイな区画があれば借りたい」と考えていますが、実際に市場に供給されているのは…
- 20坪以上の大型テナント
- 20年以上手入れされていない雑居ビル
- 駅から遠い倉庫物件
- 飲食向けの重飲食仕様のスペース
という「用途が合わない物件」が多いです。
だから、6坪・5万円程度・外観がキレイ・共用トイレあり・駐車場あり…という物件は、それだけで“空白市場”を埋める存在になります。
ここに正しく価値を置けば、テナント募集は驚くほど楽になります。
3. 区画は小さく、共用トイレ。ショッピングモール形式が最適解
複数のテナントが同時に同じ場所を使う「シェア店舗」は、一見効率的に見えますが、実際にはトラブルや摩擦が多く成功しにくい形態です。許認可も複雑で、業種ごとの設備要求も異なります。
そこで有効になるのが、「区画を完全に分けるショッピングモール形式」です。
メリット
- 区画ごとに独立して営業できる
- 法的な手続きが簡素化できる
- トラブルを最小限に抑えられる
- 共用トイレで建築コストを大幅削減
- 内装もテナントが自由に構築可能
- 商業施設としての雰囲気が保ちやすい
飲食を入れない場合、共用トイレは非常に相性がよく、導線や雰囲気を乱さない効果もあります。
6坪前後の小規模区画を2〜4つ並べることで、小規模商業施設、つまりは“小さなショッピングモール”が完成します。
4. 最初の1〜2テナントで方向性が決まる
商業施設は「最初のテナントが建物の雰囲気を決める」といっても過言ではありません。
例えば…
- 清潔で落ち着いたネイルサロン
- 世界観のあるセレクトショップ
- 落ち着いた士業事務所
こうした上質系テナントが入ると、自然とその人たちのネットワークで似たレベルの事業者が集まってきます。
逆に、激安系や客層の悪い店舗が入ると、その雰囲気が周囲に伝播し、同じようなテナントしか集まらなくなります。
つまり、方向性を決めるのは「賃料」ではなく「誰を入れるか」。
ここを丁寧に選ぶことで、長期的に資産価値の高い建物をつくることができます。
5. 建物価値を上げる最も強い戦略とは?
それは、
“上質テナント × 通常家賃 × 小規模区画”
というミニ商業施設モデルをつくること
これに尽きます。
- 家賃が高すぎると、上質テナントが離れる
- 激安すぎると、建物の客層が崩れる
- 区画が大きすぎると、開業志望者が減る
- 古い・汚いと、質の高い事業者は避ける
つまり、この3つが揃っていることが最強。
- 上質な外観と共用部のデザイン
- 6坪前後のミニ区画
- 相場価格の家賃(4.5〜6万円)
これがピタッとハマると、
“少数精鋭のテナントが集まるミニモール”が完成し、
長期的に高稼働・高利回り・低ストレスの物件になります。
6. 結論:狙うべきは“上質 × 通常価格 × 小規模区画”
安さに寄せてテナントを集める必要はありません。
「上質な環境なら相場価格でも借りたい」
という層をターゲットにすること。
この層こそが、
- 信頼性が高く
- 長く続き
- 売上が安定して
- 建物の世界観を壊さず
- お客様も上質で
- 家賃滞納も少なく
- 建物を大切に扱ってくれる
という“理想のテナント”です。
私たちが目指しているのコンセプトとも完全に一致しています。
これから小規模商業施設をつくるなら、
迷わず “上質テナント × 通常価格 × 小さな区画” を目指すことを強くおすすめします。
※参考 商業施設「ムスブルミネ」
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